ハンディGPSの誤解について

カーナビやハンディGPSがかなり普及してきましたが、一方でこうした物を使うことに批判的なご意見のサイトもたくさんあります。
人それぞれのお考えですから、いろいろなご意見があって当然ですが、ハンディGPSについて過度な期待や誤解されている部分もあるように思いますので、ここで若干そのことについて述べさせていただきます。

現在カーナビには2種類あります。従来からある車に組み込み型の従来型カーナビと、最近価格の安さから爆発的に人気が高まっている簡易型カーナビのPND(パーソナル・ナビゲーション・デバイス)です。
PNDは機能を簡易化したものが多く、自動車と独立しているため自動車への取り付け・取り外しを簡単に行うことができ、持ち運びも楽です。バッテリーを内蔵しているものが多く自動車以外でもバイク、自転車、ウォーキング、パラグライダーなどでも利用可能です。
このGPSコーナーで取り上げているハンディGPSはPNDに分類されます。また、このページでいうカーナビとは車に組込型の従来型カーナビのことです。

1.ハンディGPS(PND)は常に自分の位置を表示している地図です

紙地図とGPSを比較して書いておられるサイトの多くは、紙地図に優位性を見ておられます。
GPSを持っていても故障対策・電池切れ対策などのために紙地図を持参されることは、当サイトでもお勧めしていますが、それは非常食と同じで、GPSが使えないときの非常対策です。
紙地図の方が優れているという意味ではありません。
私の場合、山歩きにはリュックの一番奥に紙地図を非常用として持参していますが、通常はGPS内の地図を見ています。
ハンディGPSは基本的に常に現在地を表示している便利な地図という位置付けです

2.測地系について

紙地図も変わりつつあります。今まで日本の地図は明治以来「日本測地系」で測量され、図形化されてきました。GPSの進歩で、世界共通の物差しである「世界測地系」で測量された地図に書き換えられつつあります。
日本測地系と世界測地系についての詳しい解説は、国土地理院の測地系についてのページをご覧頂くのが一番ですが、大雑把に言って、日本測地系と世界測地系の間には400m余りのズレがあります。

紙地図を単に道路や地形を描いた図面として使う場合は、測地系は気にする必要はありませんが、緯度・経度の数値を基に地図上の場所を特定する場合は、緯度経度のデータと地図の両方が同じ測地系であることが特に重要です。測地系が違うと400m余り違う場所を地図上の場所と錯覚し、遭難の危険性さえあります。
また、緯度・経度を他人に伝える場合も、その値がどの測地系の値かを併せて伝える必要があります。
市販されている山岳別のガイドブックの地図の中には、どの測地系で描かれた地図かを表示していないものもあります。(ガイドブックの地図で山歩きする人は緯度経度までは必要としない場合が多いためでしょうか?)
GPSに下記の地図をインストールして使うと、この測地系について気にする必要がなくなります。

3.ハンディGPSは「ナビ」ではありません

カーナビ(車載組込型)もハンディGPSも原理は全く同じです。使い方も大変よく似ていますが、次のような違いがあります。

  • カーナビは当然ですが、車道だけを走ることを前提に作られています。従って現在地は常に車道上にあるものとして表示します。現在地の計算結果が車道上にない場合は近くの車道上にあるものとして修正表示します。
    また、車輪の回転数で移動距離が、ジャイロセンサーによって方向の変化量が分かりますから、長いトンネル内でも自分の位置を見失うことはありません。
    そして、当然ですがナビゲーションが得意です。
  • ハンディGPSは地図上の道路には拘束されることなく、計算結果の現在地をそのまま表示します。
    また、測位はGPS衛星の電波だけが頼りですから、電波が届きにくい谷底や樹林帯、トンネル内では自分の位置を見失ってしまいます。
    ナビも得意ではなく、現在地を表示している地図だと思った方が無難です。

日本はカーナビ大国だそうです。今のカーナビは確かに良くできています。実際の交差点や街並みそっくりの画像の中で『300m先で右折です』と言うように、音声と矢印で行き先を案内してくれます。まるで道を良く知っている案内人を助手席に同乗させているような感覚です。

一方、ハンディGPSは決してカーナビを小型化したものではありません。基本的に地図です。
ハンディGPSには元々地図がインストールされていますが、1/20万地図(LEGEND-C日本語版の場合)です。従って相当粗いです。
そこで、ご自分の利用形態にあわせて下記のいずれかの詳細な地図をGPSと同時に購入されることをお勧めします。地図をインストールしなければ、せっかくのGPSもトラックデータ(歩行軌跡)を取る程度しかできず、利用価値が半減します。
(ただし、GPSと地図はGARMIN社に一対一で登録されるので、GPSを買い換える度に地図も買い換える必要があります。)

GARMIN製日本語版GPSにインストールできる地図には次のものがあります。尚、最近のGPSはSDカードを内蔵できる機種もあるので、下記の2種類の地図をインストールしたSDカードを用意しておき、用途に合わせて差し替えて使用することも可能です。

  • シティナビゲーター日本  私が宗谷岬からの「e旅歩き旅」で使った地図で、カーナビのように矢印で表示するナビゲート機能もある道路地図です。リルート機能・3D表示・電話番号検索もできます。
    一般道ウォーキングには適した地図ですが、山歩きには適していません。
  • 日本地形図10m等高線  山歩きに適した地形図です。こちらの場合はナビ機能を期待するより、『常に自分の位置を表示している2万5000分の1の地図』として使った方が便利だと思います。
    山道のように分岐点が少なく、曲折が多い道では、ナビ機能は必要ないばかりか、あるとかえって煩いです。それより地図上のどの辺りに自分がいるのかを常に確認できる方が便利です。

いずれにしても、ハンディGPSにカーナビと同等のナビ機能を期待するのは無理があります。カーナビは地図を見ることに不慣れな人でも抵抗なく利用できるように設計されていますから、実際の道路や街の風景そっくりの画像が表示される3Dビュー機能が充実しています。
ハンディGPSは基本的に地図を読めることが前提です。カーナビを小型化したものだと思っているとガッカリされると思います。

くどいようですが、ハンディGPSは常に自分の位置を表示している2万5000分の1の地図です。
紙地図を使う場合でも、先ずは紙地図上に自分の現在地を探すことから始めます。
それから進むべき方向が分かる訳です。
ハンディGPSは、この最初にするべき自分の位置の同定は、既にGPSが実施済みですから大変便利なのです。

夏山の場合は登山道がありますから、紙地図上に点線で描かれた登山道の上にいることだけははっきりしているので、多少周りの景色や起伏が見えれば簡単に現在地を同定できますが、雪山の場合は登山道の上にいるとは限らないので、周りの景色と起伏だけで現在地を知ることはかなり難しい場合があります。
特にホワイトアウトなどで遠くが見えない場合は相当困難です。

こんな時、常に現在地を表示している地図を持っているということは大変心強く思います。
機械ですから当然故障もありますから、紙地図が不要だとは思いませんし、読図の訓練も大切だとは思いますが、時代の進歩を軽視することなく、有難く享受しようと思っています。

4.「味気ない時代」というご意見について

紙地図に対してGPSは「味気ない」。 というご意見については、確かに読図ができなくても誰でも簡単に取り扱える点が「味気ない」かも知れません。
しかし、時代の進歩はいつも便利さの裏に「味気なさ」を表裏一体で持っているものだと思います。
音楽ホールへわざわざ足を運ばなくても、いつでもCDで音楽を聴いたり、劇場へ芝居を見に行かなくてもTVで毎日のようにドラマや映画を見ることができたり、何日も歩いて旅しなくても電車やバスや車で手軽に旅ができます。

これを「味気ない時代」と見るか、「有難い時代」と見るかですが、私は後者の方です。
本物の演奏や芝居に比べれば、確かに「味気ない」と言えるのかも知れませんが、私はCDも、TVや映画も、車もよく利用しますし、それらを否定的には考えたくありません。ありがたく利用させてもらっています。

5.GPS(カーナビ)を使うと道を覚えないというご意見について

このご意見も一理あると思います。街中の風景そっくりの3Dビュー表示が充実している現在のカーナビは、地図と実際の道路を頭の中で関連付ける必要もなく、カーナビのいいなりに運転していると、確かに道を覚える能力や地図を見る能力が低下するかも知れません。
しかし、@でも書きましたが、紙地図の上に常に現在地を表示していたらどんなにか便利でしょう。 カーナビは使い方によっては将にこれです。常に現在地を表示している地図です。
私は地図を見るのが好きですし得意ですから、カーナビも街並みそっくりの3D表示画面より、2D表示の地図の方が理解しやすいので、常に2D表示にしています。
普段は常に現在地を表示している『便利な紙地図』という位置付けで利用しています。

ある時用事で大阪へ行った時のことですが、田舎者の私は都市高速道を走ったとき、カーナビの有難さを身に染みて感じました。
もし、カーナビがなかったら果たして目的地に行くことができただろうか、あるいは自動車事故を起こしていたのではないだろうかと思いました。
2車線も3車線も平行して走る都市高速道で、紙地図なんか見ている余裕はありませんし、左側ばかりが出口だとは限らない都市高速では、カーナビの事前の案内は大変助かりました。
騒音防止のため高い遮蔽物で視界が遮られている市街地を走る高速道では、道を覚える以前に安全に目的地に辿り着けたのは、カーナビの助けによるものが大きかったのではないかと感じました。

最近のカーナビは通信機能を持っていて、道路地図を自動でどんどん更新して行くものもあります。
ある時、いつもの道とは違うルートを案内していました。そこには新しいトンネルができていて、随分近道になっていました。
自分が住んでいる県内の道路といえども、すべてを把握している訳ではありません。カーナビによって知らなかった道を発見することは多いものです。
また、カーナビには「リルート機能」があるので、気軽に『ちょっと、こっちへ行ってみようか・・・?』と、予定外の道へルート変更してみたり、カーナビが教えてくれる観光名所などに気軽に方向転換したりできます。
私の場合は、カーナビを利用するようになってからの方が新しい道の発見、新しいルートの発見が多くなり、それまでは通ったこともなかった道を随分覚えました。

6.新しい道具を使って楽しみましょう

私のような年配のものは携帯電話は『電話』としての機能しか使っていない場合が少なくありません。どんどん高機能化されていく携帯電話の1割程度の機能も使っていないのではないかと思います。
若い人は、どんどん新しい携帯電話に買い替え、どんどん新しい機能を使いこなして楽しんでいます。
それを見ていると、時代を変えていくのは若い人なんだなあ・・・・。と、頼もしく思います。

時代は否応なしに進歩(変革)して行きます。それを否定的に捉えるか、肯定的に捉えるかは、多分年齢に大きく左右されるのではないかと思います。
動物は子供のときに学んだ『この世の生き方』で、その生涯を生きようとするものです。人間以外の動物は多分それで充分一生を全うできるものと思います。
しかし、人間社会は人生が長すぎるのか、変革が早すぎるのか、一生の間に子供のころ学んだ『この世の生き方』が通じなくなる変革が何度も訪れます。
齢をとっていればいるほど、その隔たりには大きなものがあり、時代について行くのが困難に感じます。
そして新しいものには抵抗感を覚えます。

TVが普及し始めたとき、『一億総白痴化の時代』と言われ、否定的な見方もありました。
車やパソコンの普及時期にも否定的な見方はありました。
携帯電話を子供に持たせるか否かについては現在熱い論争が新聞・TVなどで展開中です。

こうした否定的な見方は、その物のより良い発展の原動力にもなっていることは確かだと思います。肯定的な見方と否定的な見方が拮抗する中で、より良い発展があるものと思っています。

携帯電話の「電話機能」しか使っていない私には大きなことを言う資格はありませんが、私は新しい物に抵抗感を持って尻込みすることなく、積極的に取り入れていこうと考えています。
それは、何よりそうすることが楽しいからです。