GPSを安全に使うための注意

ハンディGPSを使って野山を歩くのは、大変楽しいものですが、「測地系」ということを知らずに使っていると、400m~450mの誤差があることに気付かない場合があり、大変危険です。
これはGPSを使うと危険が増すということではありません。
北緯xx度xx分、東経xx度xx分というデータと、自分が見ている地図がどの測地系のものかを知らずに使っていると危険だということです。
これは紙の地図でも同じです。紙の地図を使っていれば測地系について無知であっても構わないということではありません。2005年12月1日以後は日本測地系で描かれた地図と世界測地系で描かれた地図が混在することになり、その誤差はおおよそ400mあります。

数あるサイトの中には「GPSは登山に役立つ?」と懐疑的な意見の方もおられますが、私は使い方や測地系について熟知していれば、こんなに素晴らしいものはないという意見です。
車は毎年数千人もの死者と、その何倍もの怪我人を出している、大変危険な乗り物でもありますが、同時にこんなに便利な乗り物もありません。
今や車を利用しない登山は考えられないほど、登山にはなくてはならない道具になっています。GPSも必ずや登山にはなくてはならない道具になると確信しています。
使い方や測地系について熟知した上で、大いに利用して山登りやウォーキングを楽しみましょう。

1.測地系について

紙地図も変わりつつあります。今まで日本の地図は明治以来「日本測地系」で測量され、図形化されてきました。
2005年12月1日から日本の地図はそれまでの日本測地系から世界共通の物差しである「世界測地系」の地図に切り替わりました。

しかし、既に発行されてしまった地図や建設されてしまったモニュメントなどは簡単には変更できませんから、当分の間は日本の地図やモニュメントには日本測地系と世界測地系が混在することになります。

日本測地系と世界測地系の間には、大雑把に言って400m余りのズレがあります。
日本測地系と世界測地系についての詳しい解説は、国土地理院の測地系についてのページをご覧いただくのが一番です。

紙地図を単に道路や地形を描いた図面として使う場合は、測地系は気にする必要はありませんが、緯度・経度の数値を基に地図上の場所を特定する場合は、緯度経度のデータ地図の両方が同じ測地系であることが特に重要です。
測地系が違うと400m余り違う場所を地図上の場所と錯覚し、遭難の危険性さえあります。
特に地図を表示できないGPS(緯度・経度を数値で表示するだけのGPS)と紙地図を併用した場合は、測地系を一致させる必要があります

GPSに次の2番でご紹介する地図をインストールして使うと、この測地系について気にする必要がなくなります。また、GPSを使えば簡単に測地系の切替えも行えます。(緯度・経度の数値変換が行えます)

2.ハンディGPSは「ナビ」ではありません

カーナビ(車載組込型)もハンディGPSも原理は全く同じです。使い方も大変よく似ていますが、次のような違いがあります。

  • カーナビは当然ですが、車道だけを走ることを前提に作られています。従って現在地は常に車道上にあるものとして表示します。現在地の計算結果が車道上にない場合は近くの車道上にあるものとして修正表示します。
    また、車輪の回転数で移動距離が、ジャイロセンサーによって方向の変化量が分かりますから、長いトンネル内でも自分の位置を見失うことはありません。(自律航法装置あり)
    そして、当然ですがナビゲーションが得意です。
  • ハンディGPS(PND)は地図上の道路には拘束されることなく、計算結果の現在地をそのまま表示します。
    また、測位はGPS衛星の電波だけが頼りですから、電波が届きにくい谷底や樹林帯、トンネル内では自分の位置を見失ってしまいます。(自律航法装置なし)
    ナビもあまり得意ではなく、現在地を表示している地図だと思った方が無難です。

日本はカーナビ大国だそうです。今のカーナビは確かに良くできています。実際の交差点や街並みそっくりの画像の中で 『300m先で右折です』 と言うように、音声と矢印で行き先を案内してくれます。しかも渋滞している道を避けてくれます。まるで道を良く知っている案内人を助手席に同乗させているような感覚です。

一方、ハンディGPSは決してカーナビを小型化したものではありません。基本的に地図です。
ハンディGPSには元々地図がインストールされていますが、1/20万地図(LEGEND-C日本語版の場合)です。従って相当粗いです。
そこで、ご自分の利用形態にあわせて下記のいずれかの詳細な地図をGPSと同時に購入されることをお勧めします。地図をインストールしなければ、せっかくのGPSもトラックログ(移動軌跡)を取る程度しかできず、利用価値が半減します。
(ただし、GPSと地図はGARMIN社に一対一で登録されるので、GPSを買い換える度に地図も買い換える必要があります。)

GARMIN製日本語版GPSにインストールできる地図には次のものがあります。尚、最近のGPSはSDカードを内蔵できる機種もあるので、下記の2種類の地図をインストールしたSDカードを用意しておき、用途に合わせて差し替えて使用することも可能です。

  • シティナビゲーター日本  私が宗谷岬からの「e旅歩き旅」で使った地図で、カーナビのように矢印で表示するナビゲート機能もある道路地図です。リルート機能・3D表示・電話番号検索もできます。
    一般道ウォーキングには適した地図ですが、山歩きには適していません。
  • 日本地形図10m等高線  山歩きに適した地形図です。こちらの場合はナビ機能を期待するより、『常に自分の位置を表示している2万5000分の1の地図』 として使った方が便利だと思います。
    山道のように分岐点が少なく、曲折が多い道では、ナビ機能は必要ないばかりか、あるとかえって煩いです。それより地図上のどの辺りに自分がいるのかをいつでも確認できる使い方の方が便利です。

いずれにしても、ハンディGPSにカーナビと同等のナビ機能を期待するのは無理があります。カーナビは地図を見ることに不慣れな人でも抵抗なく利用できるように設計されていますから、実際の道路や街の風景そっくりの画像が表示される3Dビュー機能が充実しています。
ハンディGPSは基本的に地図を読めることが前提です。カーナビを小型化したものだと思っているとガッカリされると思います。

3.ハンディGPS(PND)は常に自分の位置を表示している地図です

ハンディGPSは基本的に常に現在地を表示している便利な地図という位置付けです
GPSを持っていても故障対策・電池切れ対策などのために紙地図を持参されることは、当サイトでもお勧めしていますが、それは非常食と同じで、GPSが使えないときの非常対策です。
紙地図の方が優れているという意味ではありません。
私の場合、山歩きにはリュックの一番奥に紙地図を非常用として持参していますが、通常はGPS内の地図を見ています。
紙地図を使う場合でも、先ずは紙地図上に自分の現在地を探すことから始めます。
それから進むべき方向が分かる訳です。
ハンディGPSは、この最初にするべき自分の位置の同定は、既にGPSが実施済みですから大変便利なのです。
安易に機械を頼らず、読図の訓練を必要とする紙地図を読めることに登山暦に裏打ちされた価値があるというお考えの方もあると思います。
趣味の世界ですから、人それぞれのお考えのままで良い訳ですが、私は何が何でも 「手打ちそば」 的な職人的手作業の方に価値があるとは思わない性格です。

夏山の場合は登山道がありますから、紙地図上に点線で描かれた登山道の上にいることだけははっきりしているので、多少周りの景色や起伏が見えれば簡単に現在地を同定できますが、雪山の場合は登山道の上にいるとは限らないので、周りの景色と起伏だけで現在地を知ることはかなり難しい場合があります。
特にホワイトアウトなどで遠くが見えない場合はほとんど不可能です。

こんな時、常に現在地を表示している地図を持っているということは大変心強く思います。
機械ですから当然故障もありますから、紙地図が不要だとは思いませんし、読図の訓練も大切だとは思いますが、時代の進歩を軽視することなく、有難く受け入れようと思っています。

4.「味気ない時代」というご意見について

紙地図に対してGPSは「味気ない」。 というご意見については、確かに読図ができなくても誰でも簡単に取り扱える点が「味気ない」かも知れません。
しかし、時代の進歩はいつも便利さの裏に「味気なさ」を表裏一体で持っているものだと思います。
音楽ホールへわざわざ足を運ばなくても、いつでもCDで音楽を聴いたり、劇場へ芝居を見に行かなくてもTVで毎日のようにドラマや映画を見ることができたり、何日も歩いて旅しなくても電車やバスや車で手軽に旅ができます。

これを「味気ない時代」と見るか、「ありがたい時代」と見るかですが、私は後者の方です。
本物の演奏や芝居に比べれば、確かに「味気ない」と言えるのかも知れませんが、私はCDも、TVや映画も、車もよく利用しますし、それらを否定的には考えたくありません。
私は北海道最北端の地「宗谷岬」から福井まで3ヶ月ほどかけて歩いて旅したこともありましたが、決して車社会に背を向けているわけではありません。昔も今も車は大好きでカーナビの案内で長距離の旅も楽しんでいます。

5.GPS(カーナビ)を使うと道を覚えないというご意見について

このご意見も一理あると思います。街中の風景そっくりの3Dビュー表示が充実している現在のカーナビは、地図と実際の道路を頭の中で関連付ける必要もなく、カーナビのいいなりに運転していると、確かに道を覚える能力や地図を見る能力が低下するかも知れません。
しかし、上にも書きましたが、紙地図の上に常に現在地を表示していたらどんなにか便利でしょう。 カーナビは使い方によっては正にこれです。常に現在地を表示している地図です。
私は地図を見るのが好きですし得意ですから、カーナビも街並みそっくりの3D表示画面より、2D表示の地図の方が理解しやすいので、常に2D表示にしています。
普段は常に現在地を表示している『便利な紙地図』という位置付けで利用しています。

ある時用事で大阪へ行った時のことですが、田舎者の私は都市高速道を走ったとき、カーナビの有難さを身に染みて感じました。
もし、カーナビがなかったら目的地にたどり着くどころか、自動車事故を起こしていたかも知れないと思いました。
2車線も3車線も平行して走る都市高速道で、紙地図なんか見ている余裕はありませんし、左側ばかりが出口だとは限らない都市高速では、カーナビの事前の案内は大変助かりました。
騒音防止のため高い遮蔽物で視界が遮られて、ゆっくりカーブしている市街地を走る高速道では、方向感覚さえ怪しくなり自分が東を向いて走っているのか、南を向いているのかさえ分からなくなりました。安全に目的地に辿り着けたのは、カーナビの助けによるものが大変大きかったと感じました。

ある時、いつもの道とは違うルートを案内していました。そこには新しいトンネルができていて、随分近道になっていました。
自分が住んでいる県内の道路といえども、すべてを把握している訳ではありません。カーナビによって知らなかった道を発見することは多いものです。
また、カーナビには「リルート機能」があるので、気軽に『ちょっと、こっちへ行ってみようか・・・?』と、予定外の道へルート変更してみたり、カーナビが教えてくれる観光名所などに気軽に方向転換したりできます。
私の場合は、カーナビを利用するようになってからの方が新しい道の発見、新しいルートの発見が多くなり、それまでは通ったこともなかった道を随分覚えました。

6.新しい道具を使って楽しみましょう

私のような年配のものは携帯電話は『電話』としての機能しか使っていない場合が少なくありません。
ますます高機能化されていく携帯電話の1割程度の機能しか使っていないのではないかと思います。
若い人は、どんどん新しい携帯電話に買い替え、新しい機能を使いこなして楽しんでいます。
それを見ていると、時代を変えていくのは若い人なんだなあ・・・・。と、頼もしく思います。

時代は否応なしに進歩(変革)して行きます。それを否定的に捉えるか、肯定的に捉えるかは、多分年齢に大きく左右されるのではないかと思います。
動物は子供のときに親から学んだ『この世の生き方』で、その生涯を生きようとするものです。人間以外の動物は多分それで充分一生を全うできるものと思います。
しかし、人間社会は人生が長すぎるのか、変革が早すぎるのか、一生の間に子供のころ学んだ『この世の生き方』が通じなくなる変革が何度も訪れます。
齢をとっていればいるほど、その隔たりには大きなものがあり、時代について行くのが困難に感じます。
そして新しいものには抵抗感を覚えます。

TVが普及し始めたとき、『一億総白痴化の時代』と言われ、否定的な見方もありました。
車やパソコンの普及時期にも否定的な見方はありました。
現代にはなくてはならない文字でさえも、音(オン)による伝承のほうが価値があるとされ、新参者の文字による記録は軽視された時代があったと聞きます。
そのため堺市にある仁徳綾とされる前方後円墳は、文字による記録がないため仁徳綾と確定されていないのだと聞いたことがあります。

携帯電話の「電話機能」しか使っていない私には大きなことを言う資格はありませんが、私は新しい物に抵抗感を持って尻込みすることなく、積極的に取り入れていこうと考えています。
それは、技術者として生きてきた私にとって興味の対象であり、何よりも楽しいからです。

現在位置: ホーム > カーナビとの違い